技術革新は田舎を救う(かもしれない)①

わたしがとーきょー(田舎でいう首都圏のこと)で働いていた時、仕事終わりによく映画を観に行っていた。だいたい夜8時以降か、水曜日。理由は割引がきくから。わたしは体質的にはアルコールを受け付けないのだけど、仕事終わりにビールを飲みながら(といっても一口だけ)だれにも邪魔されない暗闇で映画を見るのが好きだった。週末だとなおのこと良い。今週も自分お疲れさま、とビールを口に含みながら心の中で呟く。

でも、地元の山形に戻ってきてからはそう言った楽しみもほぼなくなっていた。
というのも、私の住んでいる地方はインフラがそこまで整備されていないので、大人の移動手段は基本が車になる。しかも映画館は車で20~30分のところにある。そうすると飲めないのだ。夜に車を走らせるのもなんだか億劫で、この2年くらいですっかり映画館から遠ざかってしまった。でも、映画は見たい。どうしたものか。

そう思っていたのはわたしだけではないらしく、実はうちの家族もそう思っていたらしい。父親も同じことをぼやいていた。ちなみにうちの父親は映画館がバシバシ閉館した付近からすっかり映画館には行かなくなり、映画の作品情報が仁義なき戦いシリーズ付近から更新されていない。つまり90年代からだ。でも、身近に情報源がないので自分の情報が更新されていないことに気がついていない。これはやばい!

ということで、今年の春から我が家にはAmazon Fire TVが導入された。Amazon Fire TVはアマゾンが配信する動画配信サービスで、無料で見られる映画も多い。そしたらどうなったか。父親(とたまにわたし)の映画鑑賞作品数が飛躍的に上がった。しかも父親は酒飲みながら映画を見るようになっている。いい気分転換らしい。こ、これはわたしのとーきょー時代の映画鑑賞方法がそのまま家で再現できているではないか!

Fire TVは、最初の簡単なアカウントやインターネット設定こそわたしがしたものの、それ以降は父親も母親も勝手に自分で作品検索するようになっていた。父親はスマホの文字入力が一文字あたり5〜10秒かかるのだが(例えば「スマホ」と打って変換するのに30秒以上かかる)、FireTVだと音声入力なので年寄りにも扱いやすい。しかも、田舎の家は必ずと言っていいほどテレビがあるので、画面だってPCで見るよりもだいぶ大きな画面で見られている。

田舎だから不便なのではない。年寄りだからITについていけないのでもない。今の時代、わかりにくければサービスは淘汰されていくので、IT関係の機材はとっても使いやすくなっているし、家で映画が観られるのなら不便ではまったくないだろう。「使い方わかんなそう」「高額請求されそう」「よくわかんない」で敬遠するのではなく、とりあえず使ってみるかどうかなんだと思う。(ちなみにFireTVは月額使用料400円前後で初月無料)

そして、FireTVを導入した結果父親に何が起こったか。なんと、今度は映画館で映画が観たくなって実際に映画館に行くようになったのだ! 家で見るのとは全然違った臨場感が楽しめて、昔を思い出したりもして楽しそうだった。

技術はどんどん進んでいく。テクノロジーは人の生活を豊かにするためにある。それは、発展した都会の中よりも田舎での貢献率の方がより高いだろう。ただ、田舎にはそういったものに触れる情報源が圧倒的に少ないので、活用できずにいるのだ。テクノロジーは田舎の人にはまだまだ敷居が高いもののように思えるけど、本当はこういった不便なところにいる人たちが一番必要としているものなのだ。わたしは技術革新は田舎を救うと強く信じている。

次回は家事のながらネットサーフィンかクラウド会計システムについて書きます。